税理士ブログ

消費税率が1%に引き下げられる案が決定した件について

2026-08-06
[税務会計,消費税法,税理士]
物価高騰等の対策の一環として食料品の消費税率が現状8%のところ、1%に引き下げを行う基本方針が決定しました。
この消費税率引き下げについては2027年4月からの2年間の暫定的なものであり、2年後には元の8%に戻すとのことであり、暫定的に引き下げた2年間の間に「所得に連動したきめ細かな給付制度」の導入のためのつなぎ法案とのことです。

消費税率の引き下げについて、本来の目的が達成できるか否かというものが根源にある問題であり
・消費税率について2年間限定で引き下げることによる各種システム的なコストの発生は問題ではないのか?
・物価上昇率について2年間で加速度的に上昇した場合、本当に2年後に消費税率を元に戻すことが実現可能なのか?
・2年後については実質的な増税となるため、国民生活を鑑みた際にそれを超える所得連動型給付を本格導入できるのか?

色々な論点はあります。
税理士として気になるのは租税について複雑にすることが得策ではないのではないか?というところです

消費税率を事細かに変更すること自体が社会生活を混乱を招く要因であることが租税の仕組みの面から見た大きな問題であり、特に消費課税という広く薄く徴税することを目的とした消費税についてはまさに一般消費者が負担すべき税の種であることから、今回の減税策について一般消費者が減税効果を享受できるのかどうかというのも問題となります。

個人的には国民生活を危惧した生活防衛策としては給付と減税の2択のうち、給付が適していると考えます。
給付についてはある程度フレキシブルに対応が可能であるのに対し、租税については国民から徴税するという性質から国民理解を得るものでなければならず、また、透明性を担保する必要性もあります。

税理士個人目線で言えば、消費税法自体を複雑にすればまた実務の現場が煩雑になります。
軽減税率を導入した際に2つの税率を抱えるだけでも事務負担は大きなものでした、それが3つに増えるのは税理士や経理職の現場目線で言えば相当な負担を強いられることとなります。

複数税率の運用についてはデジタルインボイスが正式導入されたあと、帳簿課税を前提とした仕組みではなく、証憑書類を前提とした仕組みにしてからでなければ、どうしても厳しいものにならざるを得ないと感じます。

消費税の仕組みはここ数年で劇的に複雑化しています
税理士という仕事は複雑な税の仕組みがあるからこそなりたつ仕事なのかも知れませんが、やはり悪戯に税の仕組みを複雑化することには賛成できないというのが正直なところです。

税務会計のおける法令遵守について

2026-07-15
[税務会計,法人税法,所得税法,消費税法,会計・財務分析,税理士]
税金とは誰もが支払いたくないもので、少しでも納税額を抑えたいという気持ちがあるのではないでしょうか?
私も税理士という仕事をしていながら、必要な税金については支払わなければならないという意識はあるものの、不必要な税金は払いたくないという意識が働きます。
税理士である私がこの程度の納税意識であるため、少なくとも率先して納税をしたいと思う人はごく少数ではなかろうかと推測します。

会計処理については、企業の規模その他あらゆる要素を加味して、単一なものではなく、複数の会計処理を行うことができるケースがあります、複数の会計処理の中から任意の処理を行うことにより納税額自体に変化があるケースがありますが、これについては「継続的にその処理を行うこと」を求められていることから、納税額の変化について任意性がある訳ではありません。

税務会計における法令遵守については、毎年継続して同様の処理を行うことによって担保がされます。
故に原則として、売上高、経費、利益のどの要素にも恣意性が無い処理となるのが法令に遵守した処理であると考えられます。

恣意性が含まれた会計処理については、その恣意性により決算書の数字が変化し、年度別の比較可能性において、その信憑性を失ってしまう可能性があります。
納税額を減らすために、複数の認められた会計処理の中で年度ごとに違う処理をすること自体、本来であれば好ましくないものと考えられます。

継続企業を前提とした場合、法人であれば超過累進税率を採用されていないため、利益を先送りにした場合、翌年に先送りした納税額が発生するだけの話であり、そういった意味でも会計処理を変更することによる先送りは得策ではないと考えられます。

法令遵守については税務会計のみならず、社会全体で求められる倫理観であるため、当税理士事務所においても高い倫理観を保った上での業務遂行を行っていきたいと考えています。

法人成りによるメリット・デメリットについて

2026-07-06
[税務会計,法人税法,所得税法,会計・財務分析,税理士]
事業がある程度起動に乗ったところで「法人成り」というものを検討する方も多いのではないでしょうか?
法人成りとは個人事業から法人を設立し、事業を法人で運営することであり、税務上のメリット・デメリットで言えば所得税法上の事業所得により申告を行った場合と法人税法における申告を行った場合とでの有利不利が主なものではないでしょうか?

法人による申告、個人による申告についてメリットとデメリットを記載していきます。

■給与所得控除額が使える
個人であれば事業所得であるため、個人の儲け自体に課税がなされますが、法人の場合は本人が法人の役員に就任し、役員報酬という形で法人から報酬をいただく形になるのが一般的です
その際、役員報酬は所得税法上給与所得に該当するため、給与所得控除額が使用できることについては法人成りについてのメリットです。

■個人の退職金を経費にすることができる
個人の場合は事業主自身に対する退職金は経費として認められませんが、法人の場合、本人自身が法人の給与所得者であることから、本人に対する退職金を法人の経費とすることができます。

■原則として社会保険強制加入
個人の場合は事業主自体は社会保険の加入義務者ではありませんが、法人の場合は役員についても社会保険の強制加入の対象となります、社会保険については色々な考え方があるとは思いますが、将来の社会保障について半額を法人負担にすることができる点、法人成りのメリットになると考えます

■インボイス未取得の場合、消費税の免税期間が増える
消費税の納税義務の考え方により、基準期間(おおよそ2年前)の消費税対象の課税売上高が1,000万円以上となる場合に納税義務が発生します。
インボイス取得の場合はどちらにしろ消費税の納税義務者にはなるのですが、インボイス未取得の場合、個人と法人とで基準期間の課税売上高は切り分けられるため、場合によっては消費税の免税期間を増やすことができます。

■法人市県民税の均等割が発生する
法人の場合、赤字の場合でも一定額の均等割を支払う必要があります。

■所得税確定申告に対して法人税確定申告は作成が難しい
所得税確定申告については税務署やJA、商工会などでもサポートしてくれるため、個人でも申告書の作成が可能であるのに対し、法人税確定申告書は添付書類も多く、作成も困難なものとなっています。
所得税確定申告書の作成サポートをしてくれる機関が多いのは納税弱者支援の側面が強いことから、納税弱者ではない法人に対してはそういったサポート機関が少なく、税理士に依頼せざるを得ないケースがあります。


法人成りについては税務的な側面以外にも取引上の信頼などもあり、一概には判断をすることができませんが、納税額を抑えたいという考え方だけを前面に押し出すのであれば課税所得が1,000万円超であっても税負担の軽減を実感することは少なく、課税所得2,000万円あたりになればその減税効果を実感することができると思います。

減税以外にも組織的な事業運営、子息への事業承継、その他あらゆる理由により法人成りを検討する場面があろうかと思います。私自身も法人成りについては税務メリットのみで考えるものではなく、継続事業として考えられるか?また、後継者がいるか?なども重要な検討材料となると考えております。

所得税法における担税力についての検討

2026-06-30
[税務会計,所得税法,会計・財務分析,税理士]
法人税法の範疇である法人税については基本的には営利を目的として設立された法人形態であり、利益についてはその法人が稼得した所得であり、所得の金額に応じて納税額が計算されることとなります。

それに対して所得税法の範疇である個人の所得については、その所得の種類に応じて税金を負担することができる能力(担税力)が異なってきます。
所得税法においては、この担税力の違いについて「所得区分」を分けることによって利益(≒所得)に色分けを行い、所得区分ごとに担税力に濃淡をつけるようにしています。

■所得区分の10区分
・利子所得
・配当所得
・不動産所得
・事業所得
・給与所得
・退職所得
・山林所得
・譲渡所得
・一時所得
・雑所得

このうち、不動産所得、事業所得、山林所得については事業として行うことが可能な所得区分であり、青色申告制度の適用範囲ともなっています。

この中で担税力が最も低いとみられているのが「退職所得」であり、給与所得者の老後の安定資金としての退職金に対して税負担を低くすることとしてます

この中で複雑なものが土地建物等に係る譲渡所得であり
①短期保有:担税力髙い(短期的な土地ころがしをイメージ)
②長期保有:担税力低い(長年保有していた土地建物の売り渡しをイメージ)
を基本とし、そのほか各種措置法規程により事細かく税金計算上の措置を定めています。

所得税法が複雑になってしまう訳としては根本にある所得が一つではなく、担税力に応じて区分されているという点にあります。

税理士個人として、所得税法は個人という営利活動と非営利活動を兼務する立場に対して課税を行うに当たって、担税力に応じて区分することは合理的であり、よく考えられて法制度だと感じます。
所得税法については幅広く確定申告義務を負担する観点からは簡素であるべき側面もありますが、税法を簡素にすることよりも担税力を考慮したほうが法制度としては正しいものではないかと感じます。

また、確定申告義務者をいたずらに多くしないために
・利子所得:源泉分離課税にて確定申告不要
・配当所得:上場株式等の一定の配当については特定口座年間報告書により簡単に申告が可能
・一時所得:50万円の特別控除を設けることにより確定申告義務者を減少させている
・退職所得:退職所得の受給に関する申告書の提出により、源泉徴収義務者である会社にて一時的な納税が完了

など、所得区分に応じた処理もなされております。

所得税については複雑な部分もありますが、特殊な事情がある場合(土地建物を売却した等)は税務署に確認をする、または税理士に確認をする方が無難だと思います。担税力に応じた税負担を各種措置法にて制定することにより、知らないがゆえに高い税金を負担せざるを得ないというケースもたまに見受けます。

納税資金の確保について

2026-06-23
[税務会計,法人税法,所得税法,会計・財務分析,税理士]
事業を継続的に行うためには税務当局に対して支払う税金というものは必要不可欠なものとなります。
決算書の仕組みとして、会社は純資産を留保していくことにより会社は優良企業へと進んでいきます。
純資産を留保するためには損益計算書上で利益を残す必要があります。
損益計算書上で利益を残せばそれだけ納税というものが必要となります。

少し変な言い方にもなりますが、納税することによって、会社は優良化していく側面があります。
もちろん、税理士という立場もあり、クライアントに対して無駄な納税をさせる必要はないと思っております、ただ、会社にお金を残して優良化するためにはどうしても納税というものが必要となります。

決算書についての考え方はまた別なところで意見することとし、今回は”納税資金の確保”という側面で記事にしていきます。

「利益が出ればその中から税金を納めるので、利益が出ていれば納税に苦しくなることはないのでは?」

と考えるかも知れません。
まず、法人税・所得税といった「所得課税(利益に対して課税される)」について検討すれば、下記3要素が考えられます。
・お金をもらうけど利益にならない
・お金を払うけど経費にならない
・利益は発生するがまだお金をもらっていない

これら要因により、納税資金が苦しくなることがあります。

①お金をもらうけど利益にならない
→銀行からの融資を代表とする貸借対照表取引となります。
②お金を払うけど経費にならない
→銀行融資の返済を代表とする貸借対照表取引のほか、有形固定資産の購入など、お金を払うが減価償却という形で経費化されるため、払った額全額が経費とはならない
③利益は発生するがまだお金をもらっていない
→売掛金を代表とする現金をいただいた時に売上計上する現金主義ではなく、商品などを販売した時点で売上計上する発生主義であるため

①と②については仕方のないこと、こういった会計処理が税法上求められているためでありますが、③の発生主義についてはまず、売上至上主義からキャッシュフロー経営として、
 ・未回収はないか?
 ・売り上げの計上として正しいか?
などを再度検討する必要があります。

おおよそのところで言えば決算値の30%-40%程度が法人税等として納税資金として必要となることを考えれば予測利益に対してそれ相応の現金を会社に内部留保していく必要があります。

次に消費課税である消費税
これは利益に関係なく
 売った消費税△買った消費税
の差額として納税が求められることとなり、設備投資などがあれば消費税の納税額は減少し、逆に設備投資が無い年度については納税額が相対的に大きくなる傾向になります。

消費税については前年度の納税額に応じて複数回の納税のタイミングがあります、まずはこれを把握した上で資金繰りを行うことは大事です。
それに加えて会社通帳残高のうち、一定額については消費税納税用として別管理して留保していくことも必要となります。
特に消費税については利益が出なくとも発生する税金であるため、経営を圧迫する可能性がありますが、これについても計画的に留保する必要があります。

昔はよく納税資金として金融機関から融資を受けていた企業がありましたが、現在において、納税資金まで検討した上で経営を行うのはある意味当然なものであるため、決算期において納税資金が不足して金融機関に融資依頼をするのはある意味無計画な経営者の烙印を押されてしまう可能性もあります

納税資金について不足が出ないよう、月々の訪問時にクライアントにアドバイスを行うことも、現在の税理士に与えられた大事な業務ではないでしょうか。
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